コードを書かないSE日誌

SE歴26年。コードを書かずにClaude Codeで8体のAIエージェントチームを動かしています。AIエージェント・自動化・GTDの実験日誌。

Claude Codeとのブレストは『漠然問い』から始まる——選択肢を並べると構造化が起きる

AIブレストを「アイデアを出してもらう作業」だと思っていると、なぜか浅い結果しか返ってこない。この記事では、AIブレストを機能させる「漠然問い」の作法と3工程を、このシリーズ自体が誕生した実例を使って説明する。「ちゃんと整理してから聞かないと」という思い込みを外すことが、最初の鍵になる。


📚 シリーズ「Claude Code を思考のパートナーにする」全3部作

AIをただの実行ツールではなく、思考の相棒として使うためのシリーズ。3記事は独立して読めるが、まとめて読むと全体像が見える。


「他に切り口あるかな?」で3部作が生まれた

この記事は、私がClaude Codeにたった一言を投げたことから始まった。

他に思考のパートナーの切り口あるかな?

ブログ記事のネタを考えていたとき、ふと浮かんだ疑問だった。完璧に整理された問いではない。「もっと何かある気がする」という程度の曖昧な問いかけだ。(この記事自体の制作中のエピソードで、シリーズの他の回を読んでいなくても以下の流れはそのまま理解できる。)

返ってきたのは、7つの切り口を並べた表だった。「対話 vs ソロ思考」「失敗パターン」「不完全な問い」「ラバーダック」「コーチング」「時間軸」「What編」。7軸が並んだ瞬間、私の中で何かが動いた。

おお、まさにこれでは?

壁打ち、鏡、ブレストと、ブレストが3つ目にならない?

AIが「ブレストを3つ目にしよう」と提案したのではない。7軸が並んだのを見て、自分の中で構造化が起きた。シリーズが3部作になると気づいたのは、私だ。

これがAIブレストの本質だと思っている。AIは選択肢を並べる。構造化はユーザー側で起きる。


1人ブレストの限界と集団ブレストの面倒

「自分1人で考えると同じ結論にしか行き着かない」という経験はないだろうか。

副業ブログを書いている人なら、「もうネタがない」「また同じテーマを書いている」という行き詰まりとして現れる。企画担当なら「いつもこのメンバーで集まると、同じ結論になる」という感覚だ。

1人ブレストには構造的な限界がある。思い浮かんだものから書くから順序がランダムになる。自分の発想の枠を超えにくい。「これで全部か?」という確信が持てない。

では集団ブレストはどうか。オズボーンの4原則でいう「批判禁止・自由奔放・量を重視する・結合と改善」は理想だが、実際の会議室では声の大きい人の意見が通りがちだ。そもそも「メンバーを集めて時間を揃える」という準備コストが大きく、思いついた瞬間に動けない。副業で1人でブログを書いている場合でも、「人と話して何かを決めなければならない場面」では同じ問題にぶつかる——相手のスケジュールを合わせて、その時間まで思考を保留しなければならない。

AIブレストはこの2つの限界を別の次元で突破する。それは「いつでも・即座に・柔軟に」という3軸で既存の手法にはない位置取りをしているからだ。これについては後半で詳しく説明する。


AIブレストの3工程——構造化はユーザー側で起きる

冒頭の実例を振り返ると、3つの工程に整理できる。

# 工程 ポイント
漠然問いを投げる 「他に〜あるかな?」程度の曖昧さでいい。問いを完成させない
AIが選択肢を並べる 5〜10個の候補を表形式・箇条書きで列挙してもらう
ユーザーが構造化する 並んだ選択肢を見て、自分の中で関係性・分類・優先順位が見えてくる

重要なのは③がユーザー側で起きることだ。

AIが「3部作にすればいい」と言ったわけではない。「壁打ち・鏡・ブレスト」という3部作の構造は、7軸が並んだ表を見た私の中から出てきた。AIの役割は「選択肢の列挙」であり、「構造化」はユーザーの仕事だ。

この役割分担を理解すると、「AIに全部考えてもらおう」という期待の置き方が変わる。AIは材料を並べる。料理(構造化・選択・決断)は人間がする。


漠然問いの作法——8パターンの型

「漠然問いを投げる」とはいっても、どんな問いでもいいわけではない。効く問いにはパターンがある。「ちゃんとした問いを作らないといけない」のではなく、以下のどれかに当てはめれば動き始める。

効く理由
拡張型 「他に〜ある?」「もっと〜ない?」 列挙を促す(本シリーズのきっかけになった型)
比較型 「〜と〜の違いは?」「〜の上位互換は?」 軸が浮き上がる
限界型 「これで全部?」「〜の限界は?」 抜け漏れを防ぐ
逆張り型 「逆の見方は?」「反対意見ある?」 視点を反転させる
メタ型 「私の問い方、適切?」「もっといい問いある?」 問いそのものを問う
言い換え型 「〜を別の言葉で言うと?」「具体例は?」 抽象↔具体を往復する
構造型 「分類できる?」「グルーピングは?」 一段上の階層を引き出す
ストレート型 「思いつくの全部出して」「ブレストして」 明示的にブレストモードに切り替える

一方、機能しない問い方もある。

  • 「正解は何?」 → AIが無難な答えを返す。選択肢が出ない
  • Yes/Noで答えられる質問 → 選択肢が広がらない
  • 細かすぎる条件付き → 候補が絞られすぎる
  • 完成された問い → AIが「答え」を返すだけで、ユーザーの構造化が起きない

共通点は「答えが1つに収束してしまう問い」になっていること。ブレストの目的は発散だから、問いも発散を促す形にする必要がある。

まず拡張型(「他に〜ある?」)だけ覚えれば動き始められる。 残りの7パターンは「もう少し深掘りしたい」と感じたときに参照すればいい。

「漠然問い」が効く理由は、余白があるからだ。「他に〜あるかな?」という問いは、回答の範囲を広げる余地を残している。AIは文脈を保持しながら、その余白に候補を詰めてくれる。

なお、拡張型のような漠然問いはChatGPTでも試せる。ただし、過去の作業や会話が蓄積されたセッションで使うと、文脈に沿った候補が返ってくる点で質が変わる。「問いの型を変える」ことと「どのツールで使うか」は別の話で、両方を意識すると効果が高まる。


漠然問いさえ出ない時の3つの起動方法

「ブレストしたいが、何を聞けばいいかすら分からない」という状態がある。問いを作る気力も出ない、完全な手詰まりだ。そういうときの起動方法を3つ紹介する。

起動方法1: AIに話題を投げてもらう

「最近のセッションで何か気になることは?」とAIに問わせる。

AIが文脈から「これ気にしてたよね?」「ここで止まってませんでした?」と話題を提示してくれる。出発点がAI側になるので、自分は「そうそう、それ」か「違う」かを返すだけでいい。

起動方法2: 直近ログから採掘

「最近の対話ログを見て気になる点を出して」「繰り返し出た言葉は?」と頼む。

自分の過去の言動からAIが話題を抽出する。「自分が無意識に気にしていたこと」が浮き上がる。特にブログのネタ切れに悩む人には効果的で、自分が書いたものの中に次のネタの種が眠っている。エンジニアの場合はコミット履歴を起点にすることもできる。

起動方法3: 役割を逆転する——「私に質問して」

完全に取っ掛かりがない時、AIに「私に質問して」と頼む。

普段は自分がAIに問いを投げているが、それを逆転する。AIが「最近のセッションでこういう発言してましたが、〇〇についてどう考えてますか?」と聞いてくる。この方法はコーチングや1on1の構造に最も近い。答えはユーザーが持っているという前提で、質問を受けることで自分の中の構造が見えてくる。

3つの共通点は「自分が問いを作らなくていい」ことだ。AIブレストは「良い問いを作れる人が使えるツール」ではなく、「問いを作れない状態からでも動き出せるツール」だ。


既存ブレスト法との差別化——AI独自の3軸

AIブレストは既存の手法を「置き換える」のではなく、既存の手法が苦手な3つの次元で強みを持つ。

① 起動コストがゼロに近い

集団ブレストは「メンバーを集めて時間を揃える」が前提で、会議室・ホワイトボード・Zoom設定など準備コストが大きい。「いいアイデアが欲しい」と思った瞬間に動けない。

AIブレストは思いついた瞬間に開始できる。深夜でも、移動中でも、お風呂上がりでも。ブレストの起動コストがゼロに近いことが、発想が生まれる頻度そのものを上げる。「思考が動いた瞬間に話しかけられる相手がいる」——これは知的生産において質的な変化だ。

② 即座の構造化

KJ法は付箋に書き出したアイデアを物理的に動かして似たもの同士をグループ化し、それにラベルを貼っていく手法だ。「付箋を動かして整理する」という体感を伴うが、「付箋に書き出す→グループ化→ラベリング」と段階を踏むため、1セッション数時間かかることも多い。

AIブレストは「他に〜ある?」と聞けば数秒で表やカテゴリで返ってくる。冒頭で紹介した「7軸の表」がまさにそれだ。並んだ選択肢を見ることで、ユーザー側の構造化が即座に起動する。

KJ法が「発散後の収束プロセスを丁寧にやる手法」だとすれば、AIブレストは「発散から構造化の気づきまでを高速化する手法」と言える。両者は競合せず、補完し合う。

③ 役割を何度でも切り替えられる

集団ブレストでは「ファシリテーター」「書記」「タイムキーパー」の役割を事前に決めて、途中で変えにくい。

AI相手なら、セッション中に何度でも役割を切り替えられる。

  • 「選択肢を出して」(発散モード)
  • 「これとこれの違いは?」(比較モード)
  • 「逆張りの意見は?」(批判モード)
  • 「私に質問して」(役割逆転モード)

この柔軟性は「集団でも1人でも」既存の手法では実現が難しい。AIを相手にすることで初めて成立する役割設計だ。

ただし、AIとのブレストは本質的に「発散特化のツール」だ。AIは批判しない——それが心理的安全性を担保する反面、アイデアを絞り込む収束フェーズ(批判的吟味・優先順位付け)は別の方法と組み合わせる必要がある。


メタ実演——この記事自体がブレスト結果から生まれた

この記事を読み始めたとき、冒頭で一つの実例を目撃したはずだ。「他に思考のパートナーの切り口あるかな?」という漠然問い、7軸の選択肢、そして「ブレストが3つ目になる」という気づき。

あの実例はただの説明用エピソードではない。あの瞬間に、このシリーズの3部作構造が確定した。

第1弾は「『わからない』と返すと壁が突破できる——Claude Codeとの対話でネタを発掘する7工程」として公開待ち。第2弾は「AIに指示するうまさは、自分の言葉のあいまいさを映す——Claude Code が育てる言語化能力」として並行執筆中。そして第3弾がこの記事「ブレスト——漠然問いから構造化が起きる」だ。

このネタ帳育成段階でも同じことが起きた。「漠然問いの作法8パターン」も「起動方法3つ」も、AIが候補を一気に並べて、私が「これ採用」と選ぶ形式で育てられた。記事に書いた内容が、記事を作る過程でそのまま実演されている。

主張が記事の生まれ方によって裏付けられている構造——これが「メタ実演」だ。AIブレストの主張を「分かった」と思ってもらうより、実際に体験したと感じてもらう方が記憶に残る。


思考のパートナー3部作——壁打ち・鏡・ブレストの使い分け

シリーズ3部作は「思考のパートナー」の異なる使用シーンをカバーしている。この記事(第3弾)から読み始めた方のために、各弾の要点を簡潔に補足する。

機能 AIの役割 起点 一言で言うと
第1弾 壁打ち 問いを返す 「気になる」を話しかける 行き詰まりを言語化できないときに使う
第2弾 言葉どおりに動く 「これお願い」が外れる失敗 AIが指示通りに動かないと感じるときに使う
第3弾 ブレスト 選択肢を並べる 「他に〜ある?」漠然問い 発想の枠を広げたいときに使う(本記事)

3つは独立して使えるが、同じ「思考のパートナー」という上位概念でつながっている。「どれから試すか」よりも「今どの状態にあるか」で選ぶのがいい。

行き詰まりを言語化できていないなら壁打ち。指示が外れてフラストレーションを感じているなら鏡。発想の枠を超えたいなら、「他に〜ある?」と漠然問いを一つ投げてみる。


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FAQ

Q. AIブレストは結局、ChatGPTに「アイデアを出して」と頼むのと何が違うの?

  1. 大きく2点が違う。1つは「問いの型」——「アイデアを出して」は答えが収束しやすい。「他に〜ある?」のような拡張型の漠然問いは、発散を促す形になっている。もう1つは「文脈の質」——Claude Codeのように実際の作業ログ(過去の対話・ネタ帳・執筆中のファイル等)と会話が統合された状態でブレストすると、「今取り組んでいること」に沿った候補が返ってくる。単発の問いかけとは候補の精度が変わる。なお「問いの型を変える」こと自体はChatGPTでも試せる。文脈の蓄積度合いの差がClaudeを選ぶ理由になってくる。

Q. 構造化はユーザーがやるなら、AIがいなくても1人でできないの?

  1. できる部分もあるが、「自分が思いついていない選択肢が並ぶ」という体験は1人ではできない。自分の発想の枠の外からの候補が混じることで、1人では到達できない構造化が起きる。冒頭の例でも、7軸の中には私が思いついていなかった切り口が含まれていた。

Q. 毎回こんなにきれいに構造化が起きるの?

  1. 起きない回もある。問いの型が収束型になっていたり、文脈が足りなかったりすると、候補の質が下がる。ただ「起きなかった場合」のコストが低い——時間もお金も大してかかっていないので、「今回は不発」とリセットして別の型を試せる。

関連書籍

このシリーズで紹介した「Claude Code を思考のパートナーにする」考え方の全体像は、Zenn Book にまとめています。