コードを書かないSE日誌

SE歴26年。コードを書かずにClaude Codeで8体のAIエージェントチームを動かしています。AIエージェント・自動化・GTDの実験日誌。

AIチームに「批評家」を加えたら、自分では気づかなかった誤りが3件出てきた——レビュワー・読者ペルソナ追加の実演

この記事の実施記録(2026年5月): Claude Codeのサブエージェント機能を使ったコーヒーブログ編集部デモの第2弾。既存の3体(ネタ出し係・執筆係・SNS告知係)に reviewer と reader を追加し、前回生成した記事に品質ゲートをかけた。reviewer は必須修正3件・要確認3件を検出。reader(田中さん・38歳・営業職)は離脱リスク3箇所を特定。writer が5件の修正を実施した全記録。readerが指摘した冒頭の免責事項については、AI生成であることを明示するというデモ本来の設計意図があるため、今回は修正対象から除外しました。


前回の記事では、「コーヒーブログのネタ出し係・執筆係・SNS告知係」3体のサブエージェントを作り、Tokyo Coffee Festivalの記事と告知文を自動生成するデモをお見せしました。前回の記事を読んでいなくても、この記事だけで内容は把握できます。

3体が連携して記事を書く、それ自体は確かに動きました。ただ、一点だけ気になることがありました。

「作った記事が良い記事かどうか、誰も判定していない。」

ネタ出し係はネタを出す。執筆係は書く。SNS告知係は告知文を作る。でも「この記事を読んで読者は離脱しないか?」「書いてある事実は正しいか?」を確認する役がいない。

今回は、その穴を埋める2体を追加します。reviewer(品質チェック係)reader(読者ペルソナ係) です。


追加する2つの役割

reviewer——記事を「評価する人」として読む

完成した記事を受け取り、5つの観点でチェックします。

  • 読者体験(読んでいて引っかかる箇所がないか)
  • 構成・文体(論理の飛躍・テンポの崩れ)
  • 分量バランス(各セクションの重みの偏り)
  • 事実正確性(数字・固有名詞・日程の誤り)
  • ブログとしての魅力(読んで「行きたい」「やってみたい」と思えるか)

指摘は🔴必須修正 / 🟡要確認 / 🟢良い点の3段階で分類します。

reader——「具体的な人」として読む

「コーヒーが好きな30〜40代」という抽象的なペルソナではなく、一人の人間として記事を読みます。

Claude Codeに「reader エージェントを作って」と依頼したとき、Claude は最初にこんな宣言をしました。

「既存のエージェント定義のフォーマットを確認してから作成します」

そして既存3体の定義を参照したあと、生成されたのがこの人物です。

田中さん・38歳・営業職。コーヒー歴10年。週末はカフェ巡りが趣味。移動中のスマホで記事を流し読みするタイプ。専門用語は少し分かるけれど、マニアックな深掘りで置いてけぼりにされると静かにタブを閉じる。

「コーヒーが好きな30〜40代」が田中さんになった瞬間、「この人はどこで離脱するか」を考えやすくなりました。抽象と具体の違い、と言えば地味ですが、実際にやってみると効いてきます。


reviewer が見つけた問題

前回のデモで生成した「Tokyo Coffee Festival 2026」の案内記事を reviewer に渡しました。

出てきた指摘は以下の通りです。

🔴 必須修正(3件)

1. 開始年の誤り

記事に「2017年にスタート」と書いてありました。reviewer の指摘: 実際は2015年スタートです。

2. ネルドリップ体験の説明が不正確

「体験コーナーで試せます」という記述に対して: 実際は大坊珈琲店ゆかりのゲスト3名による限定企画です。「体験コーナー」という表現では、誰でも気軽に試せる設備があるように読めてしまい、実態と乖離しています。

3. テイスティングチケットへの言及がない

「入場無料」と書きながら、コーヒーを飲むためのテイスティングチケットについて触れていない。読者が「無料で飲める」と誤解するリスクがあります。

🟡 要確認(3件)

  • 「40店舗以上」と書いたが、公式サイトの表現は「約40組」
  • HOCUS POCUS ROASTERSの拠点・実態の確認しにくさ
  • KOJI BARISTA EDITIONの説明のニュアンスのズレ

🟢 良い点(3件)

  • タイムスケジュールの「行動理由付き」構成が実用的で秀逸
  • 専門用語をカッコ書きで補足する一貫スタイル
  • まとめのメッセージ性(「コーヒーは話すことで何倍もおいしくなる」)

総合スコア: ★★★☆☆ — 修正3箇所を直せば公開可


誤りが3件あった事実について、補足します。

元になった記事はデモ用に writer エージェントが生成したもので、実際にイベントへ取材に行った記事ではありません。そのため事実確認の精度には限界があり、誤りが混入するのはある意味当然です。

記事で伝えたかったのは「誤りが混入した」という失敗ではなく、「誤りを reviewer が検出した」という動きです。書き手と確認役が別の存在であれば、こういう品質ループが回せる、という実演です。


reader(田中さん)の感情ログ

次に、田中さんとして同じ記事を通読してもらいました。出てきたのは感情ベースのコメントです。

一番刺さったポイント:

KURIYA COFFEEの紹介に「スペシャルティって薄くて酸っぱいでしょ?と思っている人に」という一節がありました。田中さんのコメント: 「これ、自分のことだ。中級者のあるあるを正確に言語化してる」

離脱リスク(3箇所):

  1. 冒頭の免責事項でテンションが下がる(「今回は試せなかったため〜」という断り書き)
  2. BESPOKEの紹介で「カッピング経験がある方にはおなじみ」という表現が出てきた瞬間、一般読者が置いてけぼりになる
  3. ペアリング〜ワークショップのセクションで情報が広がりすぎて、スマホ流し読みに移行

読後の行動予測:

「5月4日をカレンダーに仮押さえする。KURIYA COFFEEとHOCUS POCUSをメモする。BESPOKEは『難しそう』と判断してスキップ」

reviewer の指摘が「記事の中の事実」を見ていたのに対し、reader の指摘は「記事を読んでいる人の動き」を見ています。両方の視点が揃って初めて、何をどう直すかが見えてきます。


writer が実施した修正(5件)

reviewer と reader の指摘を受け取り、writer が修正しました。

1. 開始年の修正

「2017年にスタート」→「2015年にスタート」

2. ネルドリップ体験の全面書き換え

「体験コーナー」という説明を削除し、「大坊珈琲店ゆかりのゲスト3名による限定企画」という正確な表現に差し替えました。

3. テイスティングチケットの追記

持ち物リストに「テイスティングチケット(別途購入)」を追加。ミニマグの説明も実態に合わせて修正。

4. 「カッピング経験がある方には〜」の削除

田中さんが「置いてけぼり」と感じた表現を削除し、「コーヒーの香りや風味を体系的に評価する手法」という読者向けの言葉に差し替えました。

5. ペアリング〜ワークショップセクションの再構成

4つのサブセクションに分かれていた情報を「3つのポイント」にまとめ、スマホ流し読みでも見通せる構成にしました。


「批評家込みのチーム」が強い理由

コーヒーブログというデモ設定で説明してきましたが、同じ仕組みは別の場面でも使えます。たとえば社内報告書のドラフトチェック、採用要件の言語化、マニュアルの読みやすさ確認。「書く係」と「見る係」を分けるという構造は、コンテンツの種類を問いません。

実演を終えて、改めて感じたことを一点だけ書きます。

reviewer と reader を追加することで、チームは「問題を見つける」能力を持ちました。reviewer は「2017年か2015年か」を見つけ、reader は「BESPOKEで置いてけぼり感を感じた」を見つけました。同じ記事を読んで、まったく違う観点の指摘が出てきます。

次の問いは、見つけた問題のうちどれを直すかを判断するのが人間の役割であるという点です。今回、冒頭の免責事項の指摘を見送ったのはその判断の一例です。AIは問題を見つけることができますが、「それを直すかどうか」の価値判断は今のところ人間の側にあります。

次回は、エージェントが意図した通りに動かなかったケースと、チームサイズをどう考えるかについて書く予定です。


使用ツール: Claude Code(Maxプラン)
実施日: 2026年4月30日(第1弾デモ)・5月1日(第2弾デモ)
デモ環境: multi-agent-demo/


Claude Codeは Claude Pro(月20ドル〜)またはMaxプランで使えます。サブエージェント機能は特別な設定なしに使えるので、まず1体だけ作ってみるところから試せます。

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